季刊 市川モンダイ

季刊 市川モンダイ 第6号 掲載記事
左:予算案を否決され義務的経費だけを再提案する村越祐民市長 (市川市公式チャンネルより)
右上:村越市長の議長宛て申し入れ 右下:特別委員会設置費を含め、義務的経費以外は消された

「テスラ公用車導入」「市長室のシャワー室設置」を追及した越川市議を封じ込めるためか? 調査も尽くさず越川市議が職員にパワハラしたと「事実認定」し、市長権限を逸脱して「パワハラ調査特別委員会設置」を強行する暴挙に議会は「NO!」を突きつけた。 結末はーー補正予算案廃案の異常事態

 ことの始まりは、昨年の9月議会に先立って8月24日に開かれた市長の記者会見だった。会見の直前、村越祐民市長は突如、自ら会見の発表項目に「パワハラ問題」を入れると言い出したのだという。関係した市川市職員が言う。
 「僕が聞いたのは、会見当日の朝です。当然、資料も間に合っておらず、大慌てで、普通は会見に同席しない担当課長が臨場したほどです。記者さんたちも、あまりの唐突さに質問さえ出ませんでした」
 内容は、それまで米国製の高級電気自動車テスラの公用車導入や〝ガラス張り〞の市長室内シャワー室設置について追及の急先鋒を演じてきた越川雅史市川市議が市の職員に対して、①脅迫、恫喝②暴言③資料等の強要④執拗な叱責、否定⑤無視、拒絶⑥侮蔑――といったパワーハラスメントをしていたことが職員へのアンケートによってわかった、というものだ。
 毎春の職員アンケートで庁内のパワハラの訴えが増えたため、今年4月、改めて調査したところ、計9人の職員が越川市議によるパワハラを告発した。市の発表によれば、越川市議は「威圧的、高圧的な言動がある」「意に沿わない答弁や資料に怒りをあらわにする」「無視、睨みつける」「脅迫とも取れる発言をする」などの行為をし、された職員の中には退職した職員や病気休暇を取得した職員、不眠や高血圧などの薬を服用している者もいる、という。これを9月議会に合わせて、議長に対応を申し入れる、と発表したのだ。
 毎春の職員アンケートで庁内のパワハラの訴えが増えたため、今年4月、改めて調査したところ、計9人の職員が越川市議によるパワハラを告発した。市の発表によれば、越川市議は「威圧的、高圧的な言動がある」「意に沿わない答弁や資料に怒りをあらわにする」「無視、睨みつける」「脅迫とも取れる発言をする」などの行為をし、された職員の中には退職した職員や病気休暇を取得した職員、不眠や高血圧などの薬を服用している者もいる、という。これを9月議会に合わせて、議長に対応を申し入れる、と発表したのだ。
 同8月30日、村越市長はこれを、金子正議長(故人、今年1月2日にご逝去、以下略)に申し入れた。同9月2日に対応を協議する市議会各派の代表者会議が開かれると、村越市長が自ら乗り込み、「100条委員会を設置すべき」と強く主張した。
 この顛末には、与野党の垣根を超えて多くの市議が首を傾げた。
 村越市長は越川市議を名指しし、内容もこと細かに一覧表にして、一方的に「事実」として公の場で告発したが、それ以前に越川市議に事情を聞くなど双方の事実確認をしていない。
「植草(耕一)総務部長が答弁で、『二元代表制なので執行部から議員に事情を聞くわけにはいかない』というのですが、だったらなぜその前に議会に申し入れて事情を聞かせないのか。全く話にならない。議会軽視、二元代表制の侵害に当たる事態です。さらに市長自らが、『100条委員会を設置して処分しろ』などというのは、権限の逸脱も甚だしい」(ある市議)
 こうしたまともな意見はもちろん、普段から越川市議の言動に眉を潜めていた市議まで「そもそも越川さんは声も態度も昔からデカい。今になって急に出るのはおかしい。次の市長選(今年3月)に向けて批判を封じ込める意図があるのはミエミエだ」などと否定的な声が上がった。

故・金子議長はパワハラ特別委設置に 反対する票を投じた

上:市長擁護の不規則発言を嗜めた故・金子議長 (市川市公式チャンネルより)
下:修正案の採決 赤が賛成、青が反対
 「金子さんは越川さんから直接事情を聞き、越川さんも『そう受け止められたのなら僕の責任もある。これからはそういうことのないようにします』と素直に反省したので、厳重注意に止めようとしました。ところが、村越市長を根強く擁護する自民党市議はパワハラに関する特別委員会設置の議案を提出。同時に金子さんの元々の別の自民党の会派から『市長から職員に労働基準監督署などの第三者機関に申し出るよう促すことを市長に進言する案』が提出されました。執行部で勝手にやるのなら最後まで勝手にやれということです」(別の市議)
 結果、共産党などと一部の村越市長を擁護するグループ以外の自民党が共闘する事態に至り、外部に調査を依頼するよう「市長に進言する案」が可決。特別委員会の設置は否決された。
 ところが、12月議会では、今度は市長サイドから無理やりその他の補正予算案と一括して、「特別委員会設置費用78万円」が提出された。外部の弁護士などからなる特別委員会を設置して調査するため、弁護士の報酬などに充てるものだ。
 すると「議会軽視にも程がある!しかも補正予算案を人質にするような卑怯な手法を許すわけにはいかない!」と、一斉に市長派以外の議員から異論が噴出。9月議会で「市長に進言を求める案」を提出した議員から、この補正予算案から特別委員会設置費78万円を削除するよう修正する案が提出され、可決された。
 それでも市長と執行部は、執拗にその修正にかかる「再議」を提出した。「再議となると、今度は3分の2以上の賛成が必要で否決されました。ところが、その後、元どおり78万円が戻った補正予算案の採決は2分の1でいいから、ここでとうとう市長のやり方に反対する票が勝った」(予算案に反対した自民党市議)
 ここまでに至る過程で、議事進行発言、簡単にいうと議会の進行に対して意見を述べる発言は、10日間の日程だった12月議会だけで25回。そのうち3回は不適切として撤回という異例の大混乱に陥った。
 「途中で、何に賛成なのか反対なのか分からなくなるような場面もあるほど、この12月議会は大変でした。特に市長派の市議らは激昂し、不規則発言相次ぎましたが、金子さんはそれを見事に嗜めていた。議長としての中立、議会の独立を守ったと言えるでしょう」(ある無所属の会の市議)
 再議では、議長も投票権がある。金子議長の票は、78万円の削除をする修正案に「賛成」だった。
上:市長擁護の不規則発言を嗜めた故・金子議長 (市川市公式チャンネルより)
下:修正案の採決 赤が賛成、青が反対