徹底追跡!!
日本中で舌禍を招いたあのテスラは今
どこでどうしているのか
昨年7 月17 日、市川市クリーンセンター(ゴミ処理場)でテスラ導入の記者会見をする村越市長。ゴミ収集車が目の前でゴミを搬入する清掃車の爆音で時々話が聞こえなかった
哀れ!私設秘書が突貫設立した受け皿会社で
「わ」ナンバーのレンタカーになっていた!
市川市南八幡にある村越市長の個人事務所。テスラを充電するため、結局はここにしか置けないらしい。レンタカーの「わ」ナンバー。
2019年7月、突如、市川市の公用車として導入された米テスラ社の電気自動車「テスラモデルXロングレンジ」。リース料が従前の公用車の2倍以上14万5000円とあって、市議会や多くの市民からの猛反発をくらい、たった5ヶ月足らずで解約する事態となった。
契約解除にあたり、村越市長は、 「これまでの使用料65万8000円は支払ったものの、知人の会社が買い取ったため、違約金は発生しなかった。これからは政務活動として使用していく」と説明した。
だが、これを「知人」というのか。村越市長の私設秘書、押切裕雄氏が代表を務める会社「ワルデンクリフ」(以下ワルデン社)が、泥縄式に設立され、そのワルデン社のレンタカーとして「わ」ナンバーになっていたのである。市川市のアイドルになるはずが、日雇いのレンタカーになってしまったのだ。
ワルデン社の設立は2019年10月23日、事業目的には「自動車レンタル」「古物商」とある。つまり、この中古のテスラをそれまで所有していた京葉産業から買い取り、抱えるためにだけ設立されたとみるのが妥当だろう。
それにしても、テスラモデルsならまだしも、モデルX ロングレンジのレンタカーとは、なんて豪華な!さぞかし借り手はいるのか、と思いきや、そうでもないようだ。
行方がどうしても気になったスタッフが追跡してみると、村越市長の個人事務所の前に置かれているものの、運転しているのは主に押切氏だ。
まだ暑い9月のある日、テスラは市役所新庁舎地下駐車場の庁舎入り口に最も近い場所に止まっていた。運転していた押切氏は、Tシャツに穴のあいたジーンズ姿だったという。
「市長は全然乗っていないようですよ。少なくとも、市長が乗り降りするのは、今年になってから見ていませんね」(ある守衛)
市川市南八幡にある村越市長の個人事務所。テスラを充電するため、結局はここにしか置けないらしい。レンタカーの「わ」ナンバー。
まともな予算審議もなく無理やり導入
ワルデンクリフの入居するビル。テスラ社の由来、物理学者ニコラ・テスラがかつてニューヨークに建てたウォーデンクリフ・タワーのパクリ?ポストに鍵はない。
確かに、例の白金台のマンションにも、テスラは時々しか姿を見せない。むしろ、千葉県八千代市にある押切氏の自宅や、東京都内東北部から市川市に至るエリアをウロウロしているようだということがわかった。
ワルデン社の所在地を訪ねてみたが、ポストには鍵もかかっておらず、昔ながらの鉄板の玄関ドア下方にある新聞受けは緑色の養生テープで塞がれており、電気メーターも肉眼で動きを確かめるのは困難なほど動いていない。同じ建物に入居する業者にも聞いてみたが、「あの部屋に誰かが出入りしている気配は全くありませんよ」という。また、おそらく買取に際し、車庫証明が必要だったのだろう、近所に駐車場を一応借りているものの、テスラの命綱である充電設備がないのだ。普通にまともな事業をしている会社とはとても思えないのである。
市役所関係者がいう。「あの車、そもそも持っているだけで大変なんです。市で使っていた時も、ちょっと遠出するたびに、やれ、道幅はどうなのか、充電設備はどこにあるのかなど、その度に車両担当が苦労していました」
そもそも、テスラを公用車にすることは、議会で予算審議さえされていなかった。
「昨年の2月議会で出てきた予算案には、その他の公用車も含めた全てにかかる『車両費』としかなかったんです。前市長の時代から電気自動車の導入は懸案だったので、ある市議が、『電気自動車は入っているか』と質問したところ、管財課長は『ありません』と答えてしまった。市長がテスラに乗りたい、と言ってはいたものの、まさか本気で導入しているとは思えず、現実味のない話と考えていたからです」
結果、間違った答弁をしてしまった管財課長は、今年3月末で市川市役所を退職した。
さらに、村越市長が勝手に描いていたテスラ導入計画は、当初、2台の予定だった。写真のスポーツタイプでファルコンウイングの派手なテスラは、なぜか副市長用。自分は遅れて納入されるはずだったセダンに乗ろうとしていたのだが―。
「もともと市長専用、副市長専用などという車両はなかった。当時の副市長は本庁舎からそんなに遠くない場所に自宅があり、自転車で出勤していました。ところが、仮庁舎になってやや遠くなったので一時的にエスティマを使っていただけ。ご自身は専用車など全く必要ないと思っていました」
その副市長は、去年の夏、呆れて辞任した。
ワルデンクリフの入居するビル。テスラ社の由来、物理学者ニコラ・テスラがかつてニューヨークに建てたウォーデンクリフ・タワーのパクリ?ポストに鍵はない。
摩訶不思議なワルデン社の資金繰り
摩訶不思議なワルデン社の資金繰り
市川市はテスラを早々に手放した形だが、一体、そのツケは誰がどう負担しているのか。
「レンタカーとして大いに稼ぎまくっているなら別ですが、そんな様子はない。市長あるいは私設秘書が毎日利用していたとするなら、月何十万円にもなります。市長の報酬しかない村越さんには、白金台のマンションやら個人事務所の家賃を払ってテスラ代も、というのは無理でしょう。となると、どこから金が出ているのか。ワルデン社の家賃も駐車場代もあるし、テスラの維持費も馬鹿にならない。ましてや買い取り資金など、どこから調達したのか不思議です」(ある市川市民)8月に監査請求した市民もいるが、なんと「契約時から1年以上経過している」との理由で却下された。
予算から決算まで、全てがブラックボックスなのである。
もっとも、市長や私設秘書が政務活動として使用したのなら、収支報告を総務省に届け出る必要があるはずだが裏からのぞける庭は、長い間、手入れもしていない様子。痛々しい光景だった――。
摩訶不思議なワルデン社の資金繰り