季刊 市川モンダイ

　３月21日、任期満了に伴う千葉県知事選挙が投開票された。新人８人の争いとなったが結果は、元千葉市長の熊谷俊人氏が過去最多の１４０万票余りを獲得して他の候補らに圧勝した。
　有権者のおよそ75％が熊谷氏に投票したわけで、いまや、千葉県内どころか首都圏、日本中に大きな影響力があると言っても過言ではない。
　熊谷氏といえば、昨年６月、新型コロナ対策の特別定額給付金の支給をめぐって、村越祐民市川市長とバトルしたことが、市川市民の記憶に残る。
　市川市は給付金の申請書類をネットでダウンロードできる方式をとったものの、結局はそれに手書きしたものを郵送することになったため、「事務が混乱、申請書を送って１カ月経ってようやく給付できるという状況に陥っています」と昨年５月27日のフェイスブックで当時の熊谷千葉市長が投稿したのが発端。申請書のダウンロード方式を採用した自治体は他にもあり、当初、称賛されたが、熊谷氏はその後の混乱を見越して、申請そのものをオンラインで受け付ける手法をとった。その結果、千葉市は市川市よりも給付の開始が少し早かった。
　ところが、それを６月議会で指摘された村越市長は、むきになって「極めて不快で不見識」と熊谷氏に逆ギレしたのだ。
　「内容は些細なことですが、自分のとった手法がどうだったのか、謙虚に検証している熊谷さんに対して、村越市長は失敗しても強引に自画自賛するという本性を露呈した、ということです」（あるベテラン市川市議）
　こんな禍根のある２人だが、今後、熊谷知事率いる千葉県と市川市の関係はどうなるのか。
　実は、早くも暗雲が立ち込めている。

　昨年９ 月、村越市長がコロナ対策の切り札として突如、「中核市に移行して自前の保健所を設置する」と言い出したのだが、これが仇になりそうなのだ。
　「熊谷知事は、就任早々、千葉市、船橋市、柏市という県下の中核市と合同で、対策本部を立ち上げると表明しています。その真意は、このような自体においては県下一丸となって意思統一を図り、より効率的な対策を打っていくということ。中核市だから勝手にやっていい、という発想とは真逆です」（ある県庁担当記者）
　熊谷氏は、まだ候補だった段階から、この構想をことあるごとに解説していた。中核市も含めた統一した体制をとる一方、消防などの現場には各市の職員を派遣してもらい、綿密で遅滞のない情報共有をする、と。
　まさに膝を打つようなプランではないか！
　このことは市川市の２月議会でも、中核市移行構想との兼ね合いで取り上げられた。大久保たかし市議の質問だ。
　「この候補が知事となれば、そもそも情報が来ないということが解消されて、市川市が中核市となって保健所を運営する意味はかなり薄れると思う。さらに市長は中核市移行に関して市川市の自立した判断が必要だと言っているが、県の保健所と千葉市、船橋市、柏市の合同対策本部を立ち上げるというのは、県としての統一した判断が必要という意味だが、この点について村越市長の見解は」
　すると村越市長は、またもやむきになって、こう答弁した。
　「ご指摘の点は、地方自治の本旨に反する考え方だ。以上！」
　これでは、千葉県下での統一的な取組には、自分は加わらない、と宣言しているようなものだ。
　さらに別のベテラン市議が解説する。
　「村越さん本人だけならいいですよ。でも、これは市川市民全員に関わること。エゴ丸出しもいい加減にしてもらいたい。そもそも中核市になると、年間23億円も経費がかかることがすでにわかっています。船橋市や柏市なども、２年も３年もかけて、検証、議論していたのに、市川市は早くも６月議会で中核市移行にかかる予算案を出そうとしていると聞きます。何がなんでも拙速すぎる。むしろ、足元のコロナ対策はどうなっているのか。中核市議論は、コロナ対策怠慢のすり替えにしか見えません」
　熊谷氏に対抗意識を燃やす村越市長だが、相撲なら、同じ土俵に上がることすらできていないのでは――。市長個人の意地に、市民を巻き添えにするな！