たった3週間で作った“不公平”バラマキ策
昨年12月14日、補正予算案廃案によって取り急ぎ執行を阻止できたのは、筋違いの「パワハラ調査特別委員会設置費」だけではない。
市長の任期満了、市長選挙が行われる今年3月をめがけて仕掛けられていたいくつもの「バラマキ」「ハコモノ」政策が中断することになった。
ひとつは行徳駅周辺に今年4月の開業予定だった「こども送迎ステーション」。待機児童の増加に鑑み、保育園を増やすだけでなく、活用する方法の一貫として計画されていた。だが、本当の目的は、これではないか? 本誌既報、塩浜地区の地域コミュニティゾーン内でやはり今年4月開業が予定されている県内初の保育園と児童発達支援センターが一体となった豪華屋内プール付き児童施設の〝都合〞だ。
市職員がいう。「もともと市川南部のエリアには発達支援センターがなく、4か所もある北部とのバランスは問題でした。でも、とにかく今年の4月開業が至上命題だと言われ、県の補助金申請などが間に合わず、結果、市川市の財政から4億円以上負担することになったのです」地域コミュニティゾーンは、千葉県の下水処理場建設と合わせて市川市の臨海開発の目玉である。ところがアクセスとしては、市街地に比べてかなり不便だ。また、この施設は建設から運営まで土地の所有以外、民間に委託する形式。「村越市政が開業を急いだことで、請け負う民間業者の負担も大きいはず。
そこで、この開業に合わせて行徳駅周辺に『こども送迎ステーション』を開設し、利便性を高めようとしたようです」(前出の職員)
まだある。例えば、昨年4月、匿名希望の市民から「子供たち、特にひとり親家庭を助けたい」と1億円の寄付があったことで予算化された「一人親世帯に対する進路支援給付金」事業だ。この1億円を原資に「こども未来支援基金」を立ち上げ、そこから今年の2月下旬、ひとり親家庭で進学・就職を控えた中学3年や高校3年に1人当たり6万円を支給するというもので、12月議会に提案された補正予算案(廃案)に3504万円が計上されていた。
しかし複数の市議から「4月に寄付されたのに、基金にするのがなぜ今なのか。進路支援にしても、もっと早く告知されてれば、選択肢を増やせた子供もいたかもしれない」との異論が相次いだ。
そして極め付けは、これだろう。
昨年11月19日、政府は「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定し、その中に、周知のクーポンで配ることが大議論になった「子育て世帯臨時給付金」と「住民税非課税世帯臨時給付金」が盛り込まれた。
これをを受け、市川市が急遽、12月議会に追加議案として突っ込んだのが「いちかわ生活よりそい臨時特別給付金」。国の条件では「均等割による住民税の非課税世帯」となったが、それを「何らかの事情で課税されてしまっているが非課税世帯と同じような所得水準の世帯」まで拡大しようというものだ。
非課税世帯の所得が概ね200万円以下であることから、市川市内の全ての200万円以下の世帯に10万円を給付する。対象世帯は約 万世帯に上り、市川市単独の財政負担は合計40億円となる。「低所得の世帯に給付金を出すということに変わりはなく、議員も反対しづらいんですが、実際、均等割も非課税になるというのにはそれなりに積み上げてきた理由があるわけで、ここを否定するのですから、不合理があちこちに生じるのは必然。拡大した対象世帯のほとんどが単身や年金受給者の世帯なんです」(市川市職員OB)
年金受給者のケースについて詳しく解説しよう。
年金所得には、サラリーマンの給与所得と同様、算出される前に様々な「割引き」がある。例えば、年金支給額が170万円の場合、「所得」とカウントされるのはその75%からさらに27万5000円を差し引いた額で、ちょうど100万円になる。同様の年金受給者2人の世帯なら、実際の収入は340万円あるにもかかわらず、世帯の所得は200万円となり、「よりそい生活給付金」の対象となる。こうした不公平感を理由に、議会では共産党や無所属の会が反対した。
ある反対した市議がいう。「12月議会の補正予算にギリギリ間に合わず、追加で出されたため別の議案として、可決されてしまいました。問題はたった3週間で仕上げられた施策だということ。40億円も使うのに、もう少し慎重な検討ができなかったのか。選挙に間に合わせたい、というのがミエミエなんです」
議会で福祉部長は、市川市と同様非課税世帯を同水準の課税世帯に拡大した自治体はあるか、との質問に「現状では確認できておりません」と上目遣いで答えた。
これら全て市長選の「税金を使った買収」策と言ってはいけないのだろうか。
たった3週間で作った“不公平”バラマキ策