季刊 市川モンダイ

新春企画
緊急対談 「市川市政の走り方」
田中甲氏ד走らせるプロ”青山剛氏

32回連続出場の元旦マラソンで恩師に会うのを毎年楽しみにしていた(青山氏)
市川市を健康な行政にするにはまず市の職員が肉体的にも精神的にも健康でなくてはならない(田中氏)
世界中が新型コロナウイルスに振り回された激動の一年が終わった。今年の夏には東京オリンピック・パラリンピックも開催される。持続可能な人の生き方が求められる今、まずは一人一人の正しい姿勢、立ち方、歩き方、走り方についてオリンピック選手を育てるランニングコーチ・青山剛氏と元衆議院議員・田中甲氏が、来るべき新しい時代について語り合った。
田中:
昨年来のコロナ禍であらためて健康の大切さに気がついた方も多いと思う。私も市内で医療モールやスポーツクラブなど健康増進がまず大事と考え事業を展開しています。

青山:
僕は3歳から市川に住んでいて、今年で44年になります。南行徳中学校時代、所属していた陸上部の顧問の先生が、今の元旦マラソンの競技委員長をされていて僕も出場することになりました。1989年の元旦から32回連続出場中です。

田中:
今年はコロナで中止なんですよね。それと、昨年から元旦ではなく第3日曜日になったので、名前も「市川市民マラソン」になった。

青山:
そうなんです。僕、元旦に子供の頃の恩師に会って毎年いい報告ができることを楽しみにしていた。日々のモチベーションになっていました。でも元旦じゃないと来られない方が増えて残念です。その後、大学でトライアスロンを始めたのですが、これは中学時代からの夢だった。そういうことを元旦マラソンで恩師に報告するわけです。大学2年でプロチームに入り、1999年にロングディスタンス世界大会に日本代表として出場しました。毎年そういう報告をしていたのです。その後、トライアスロンで五輪を目指していた中西真知子選手からコーチの依頼を受け、選手活動を休業してコーチに専念し、2004年のアテネオリンピックに送り出すことができた。その中西選手も元旦マラソンに出てくれて、皆さん、喜んでくれました。中西選手は僕の実家のとなりのアパートに住んでもらい日々トレーニングしましたから、出場資格があるわけです。市川って、東京にも近いし、羽田や成田へのアクセスもよくて世界につながっている。江戸川の河川敷などランニングには最適。自然も豊かでとても環境がいいんです。思い返せば、市川だからできたことがたくさんありました。だから今は、市川市民の健康レベルを上げることに寄与して人生を終えられたらいいな、と思うほど市川愛あります(笑)。

田中:
僕も青山さんと偶然お話する機会に恵まれ、もう膝を打つようなお話ばかりで(笑)あ、この方に僕のこれからの健康を指導してもらおう、とコーチをお願いしたところ。実は、僕が市長になったら市の職員全員に指導してもらいたい。青山さんのお話で一番印象に残ったのは、持続可能な運動とは、正しい姿勢作り、最低限の柔軟性の確保、体幹主導で疲れづらいカラダと、適切な歩行ができてこそ、というお話です。市川市を健康な行政にしていくには、まず市川市の職員が市民サービスを担っていく上で、肉体的にも精神的にも健康でなくてはならないだろうと。

青山:
そうですよね!姿勢というのは体だけではなく、仕事をする姿勢、聞く姿勢、見る姿勢、市民に対する姿勢、全て姿勢を正すことから始まります。人となりというのは、見た目にほぼ出ると思う。それから柔軟性も大切。だからストレッチをするのです。柔軟性が欠如すれば、どんどん姿勢も健康も崩れていくだけではなく、頭も硬くなる。体が硬いというのは、頭の硬さにも繋がっていくんです。これは科学的にも証明されている。プラス、機能する体幹は、腰痛や膝痛、肩こりをかなり予防できるということもわかっています。考える力も違ってくるのは自明の理ですよね。

田中:
そういうことを市の職員にも心得てもらう機会を作りたいですね。

青山:
実は僕、木更津市のスポーツコミッショナーとして特別顧問コーチなんです。木更津の場合は、市長が若くて、トライアスロンもマラソンもやってるので、市の職員もひっぱり出されています。それをきっかけに運動されて、いい感じになっています。木更津に行くたびに、いいな、と思います。
市川市側から臨む江戸川の夕陽

ハコモノより市川の自然を生かして(田中氏)
江戸川から見る夕陽は最高です(青山氏)

田中:
市川市も、2004年に「健康都市いちかわ」宣言をしているんですよ。WHO(世界保健機関)が提唱したことに呼応したものなのですが、木更津に追い越されている、ということでしょうか。

青山:
木更津市も元旦にマラソン大会があるんです。僕も誘われるんですが、まさか市川の元旦マラソンを裏切るわけにはいかないとずっと断ってきましたよ(笑)

田中:
青山さんは、木更津市以外にも千葉県内のあちこちで活躍されているんですよね。

青山:
あとは銚子市、鋸南町、長柄町などで健康増進のためのプログラムを作っています。なぜか市川市がないんですよ、地元なのに(笑)。特に鋸南町は過疎化が進んでいて、スポーツで町を元気にしようと、毎年、各種大会やセミナーを開いています。それを聞きつけた銚子市が「うちでもやって欲しい」と、さらにそれを見ていた木更津市長の渡辺芳邦さんから直々に連絡があって「うちでもぜひ!」と繋がっていきました。鋸南町の夕陽は、それはもう素晴らしい。でも実は、市川側からみる江戸川の夕陽も全然、負けてないんです。東京は西側で陸の方しか見えませんが、市川は東側から川方向を臨む絶景です。なのに遊歩道(サイクリングロード)は、途中で 断されちゃっていて残念なんです。

田中:
三番瀬に2億円以上かけて作られた野鳥観察舎があるんですが、建物だけはカッコよくできていますが、昔ほど野鳥が来るわけでもなく、景色も工場ばかり。そんなハコモノに税金を使うなら、河川敷をちょっと整備すれば自然を生かした、いい場所になる。これからは、もっと自然環境と融和した持続可能なものにするべきでしょう。そうすれば、予算も自ずとかからない。

青山:
もっというと、市川市の地形は南北に長くて、日本列島のように、豊かな自然があるんです。例えば、大野と行徳では全く違う顔をしている。そんなところも生かしてほしい。

田中:
なるほど。そういうことも市川市のいい面として生かしていかないといけないですね。多様性をそもそも自然レベルから内包している。北の方は、夏はカッコウが鳴いていて、まるで別荘地のようなんです。南の海岸沿いも含め、良さが生かされていないですね。

青山:
先ほどの正しい姿勢、機能する体幹、最低限の柔軟性というのは、正しい歩行までの話で、もう一つ、持続可能な走り方、というのもあるんです。それは、自動車に例えているのですが、前輪が目的と目標、後輪が正しさと楽しさ、その4つの車輪がバランスよく機能してこそ、正しく走ることができるんですよね。

田中:
なるほど。市川市政もそうありたいですね。
青山剛(あおやま・たけし)氏
1974年、東京都港区生まれ市川市行徳育ち。46歳。元トライアスロン日本代表。引退後プロフェッショナル・コーチとしてチームアオヤマを主宰。トライアスロン中西真知子選手を五輪に導いた。