季刊 市川モンダイ

押切被告の起訴事実で見えてきた
「電通丸投げ」疑惑の正体?


急浮上するもう一人のキーマン
「林隼也」と名乗る男が果たした役割とは?

  千葉地方検察庁は6月15日、村越祐民市川市長の私設秘書、押切裕雄(51、八千代市)を電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪で起訴した。
 起訴事実を整理すると、2019年3月15日に押切被告の知人が代表となって設立した会社の登記申請書類として、2018年12月11日に押切被告の口座に入金された500万円の取引履歴を、知人が開設した口座の記録と偽り、東京都港区内の法務局に提出し、資本金の払込があったかのように装った、というものだ。
 いったい知人とは誰で、何をするための会社なのか。
 その会社は、高輪ゲートウエイ駅のほぼ真向かいに位置する集合オフィスに設立されていた。
 県警も検察も、その会社の名前は公表していないため、本紙も記述は控えることにするが、注目すべきはその代表だ。
 「林準也」。住所は、東京都内の市川市に程近い地域になっている。
 一文字違いの「林隼也」は村越市長周辺のあちこちで見かける名前だ。

「株式会社 電通」の名刺で会議に出席
押切被告が偽造書類で設立した会社代表
村越祐民後援会の会計問い合わせ先担当者

起訴状に出てくる会社の所在地だがー。
 「法人登記をする場合、印鑑証明を提出しなければなりません。その印鑑証明は、住民票のある自治体が住民票の情報に基づいて発行しますから、同一人物だとしたら、こちらが本名でしょう」(法務省関係者)。
 村越市長の政治団体は村越祐民後援会のほかすでに解散した団体も含め複数あるが、ここ数年の収支報告書には、全て「問い合わせ先担当者」として「林隼也」の名前がある。
 「林君は、市長当選前から事務所にいました。市長の出身校、青山学院大学の学部生で、街頭演説などの準備を手伝っていました。2018年には卒業して、市長の口利きで、電通に入ったと聞きました。名前も、確か、その2種類みた記憶があります」(後援会関係者)
 やはり同一人物なのだろう。「林隼也」氏は2018年8月、村越市長が就任してまもない頃に開かれた電通との会議に電通の名刺を持って出席していたという。
 「いちかわ未来創造会議の看板となった市川市のブランド戦略や行徳の塩浜地区海辺の利便施設基本計画策定業務など、次々と市川市からの委託業務を獲得していますが、18年8月の会議からすでに、電通に丸投げする前提としか思えない議事録が残っています。塩浜の利便施設基本計画などは、2019年10月に公募をかけて電通に決まりましたが、その前の6月には、電通に見積もりを投げている記録もある。入学試験で言えば、受験生の中に入試問題を作った超本人がいたのと同じ。こんなことあっていいのか、ずっと疑問に思っていました」(市役所関係者)
 そして、今回、押切被告の起訴でわかったのが、資本金500万円の入金を装った法人の代表になっていたということ。
 オフィスの所在地を尋ねてみると、集合オフィスの受付に、該当する企業名は出てこない。受付の女性に尋ねてみると、不思議な答えが返ってきた。
 「その会社、今も、過去にも、利用者として登録した形跡がないんです。でも、郵便物は時々くるので、差出人に全て返却しているんです」
 いったいこの会社で何をしようとしたのか。
 「資本金500万円というのは、建築業の許可がそれ以上じゃないと取れないんです。公共事業を巡って押切さんが何かをしようとした形跡、ということではないでしょうか」(市川市から公共事業を請負った実績のある建設業関係者)
 確かに、押切被告が代表を務める法人は、他にも2社あるが、どちらも資本金は500万円となっている。
 何がどう利用され、どれほどの税金が吸い取られたか否かは、千葉県警の今後の捜査に期待するしかない
起訴状に出てくる会社の所在地だがー。